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薬品だけで皮膚の細胞を心臓の細胞に変えることに成功

ウイルスなどを用いた形質導入や形質変換などの遺伝的な操作を行わず、試薬だけで細胞を変換することに成功したという論文がGladstone instituteよりありました。scienceとcell stem cellから公開されました。scienceの方では皮膚の細胞を心筋に、cell stem cellでは神経幹細胞へと変換できたそうです。今回は両方を簡単に紹介します。

以前からも皮膚の細胞を心筋や神経幹細胞に変換するすることは可能でした。しかしそれには遺伝的な操作が必要なのですが、これが非常にめんどくさいし、結構お金もかかる。しかもiPS細胞を作るの使われるc-Mycなどはがん遺伝子として悪名高く、点変異を引き超す確率も高く、安全性の心配もあります(iPSの臨床試験の一例目は成功しています。ちなみに二例目はほんのごくわずかな変異があり、念のため取りやめました。この判断が正しいという意見と慎重すぎるという意見で論争があったのはまた別のお話し)。そこで簡単、安全な小分子を混ぜるだけで細胞種を変換で来たらいいのにという需要は以前からありました。そして今回その手段を開発したのです。

まずscienceの方では、心筋のマーカー遺伝子(alpha myosin heavy chain)のプロモーターで制御されるGFPを用意し、皮膚の細胞に導入します。そしてそこへ細胞のリプログラミングを誘導または促進する試薬と、心筋新生を誘導する試薬を様々なパターンで混ぜていき、スクリーニングを行いました。はじめは89種の試薬を使い、様々な組み合わせを確かめていきました。最終的に残った化合物が以下の9個。
CHIR99021 – GSK3 inhibitor that activates the Wnt pathway
A83-01 – TGF-beta receptor inhibitor that inhibits TGF-beta signaling 
BIX01294 – GLP and G9a histone lysine methyltransferase inhibitor 
AS8351 – Histone demethylase inhibitor 
SC1 – ERK inhibitor 
Y27632 – ROCK inhibitor 
OAC2 – Reprogramming booster 
SU16F and JNJ10198409 – PDGF receptor inhibitors
20~30日間の培養後、遺伝子発現、エピゲノム、電気生理学的な特徴を調べていくと、通常の心筋と非常によく似ていたそうです。

cell stem cellの方でも同様に皮膚の細胞からスタートです。こちらはクロマチン修飾因子、シグナルパスウェイ調節因子、成長因子を使用し、スクリーニングを行いました。
CHIR99021 – GSK3 inhibitor that activates the Wnt pathway 
LDN193189 – Inhibitor of BMP type I receptor ALK2/3 that prevents Smad phosphorylation 
A83-01 – TGF-beta receptor inhibitor that inhibits TGF-beta signaling 
Retinoic Acid – Enhances neural differentiation 
Hh – Smo agonist that can promote neural differentiation 
RG108 – DNA methyltransferase inhibitor 
Parnate – Histone demethylase inhibitor 
SMER28 – Autophagy modulator
こちらも10日ほどの培養すると、マーカー遺伝子の発現や、自己複製能、in vivo及びin vitroでmpニューロン、アストロサイト、オリゴデンドライトへの分化などの点で、本来の神経幹細胞とよく似ていたそうです。

これまでの方法と比較して、再生医療を行う上での安全性やコストの面で大きなアドバンテージとなるでしょう。今後効率の向上し、他の種類の細胞を作り出すが可能になれば再生医療において主流になる可能性が高いと思います。

今回紹介した論文


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ガンのワクチンは作れるか

人用のガンのワクチンを作製することに成功したという報告がありました。

手法はガンで見られる変異タンパク質を抗原として、ワクチンを作製します。ガンワクチンを作製しようという試みは昔からありましたが、あまりうまくいっていませんでした。これまではガンで多く発現するタンパク質を抗原として作製していたため、正常細胞でも少し発現しているというのが問題になっていました。近年ガンのゲノムシーケンスのデータが集められ、ガンでよく見られる変異が分かってきました。そのため、変異タンパク質を抗原として、ワクチンを作製できるようになったわけです。変異タンパク質ならば正常細胞には存在しないため、良い結果が得られるだろうと期待されます。ワクチンの作製方法としては、患者から白血球を取り出し、抗原提示細胞である樹状細胞を作り出しました。その細胞に変異タンパク質を曝し、成熟させた後に体内に戻すことで、同一の抗原がきたときに免疫細胞にその情報を提示できるようにしています。昨年の段階でマウスで成功しており、今回はメラノーマ患者に対して行ったものです。

まだ、ほんの数人に対して行ったものに過ぎず、実際に臨床で応用するには超えなければいけない壁はたくさんあります。しかしうまくいけば、変異のタイプに応じた個別化医療も可能になるでしょう。

元の論文
A dendritic cell vaccine increases the breadth and diversity of melanoma neoantigen-specific T cells

DNAのメチル化が男女の脳の差を決めている

以前、このブログで学位取得者に男女差があることに触れました。問題はなぜそのような違いが起きるかです。今回、生まれる前と後の間に、メスのラットの脳では正常な発生のために鍵となる雄性関連遺伝子のサイレンシング(遺伝子の発現抑制)を積極的に行っていることが明らかになりました。

脳の特定の領域、例えば視索前野(交尾行動のある側面を調節する脳領域)には、遺伝子発現等で雌雄差が大きいことがあります。胎児の発達段階で、精巣由来のホルモン(男性ホルモン)にさらされると、メスの脳であっても多数の雄性関連遺伝子が発現するなど脳には雄らしい特徴が誘導されます。これらの遺伝子が雄でのみ発現し、雌ではサイレンシングされる仕組みは不明でした。
今回、視索前野を観察し、雄性関連遺伝子のDNAメチル化により、雄性関連遺伝子のサイレンシングされていることが分かりました。DNAメチルトランスフェラーゼの阻害剤やコンディショナルノックアウトを行うと、雄のラットのような振る舞いをし、遺伝子発現も似ることが分かりました。

今回はラットの結果ですが、同じような制御が人でもあると予想されます。草食系男子なんて呼ばれる人がいますが、彼らは生まれるころに脳のDNAのメチル化が阻害されたのでしょうか。

元の論文
Brain feminization requires active repression of masculinization via DNA methylation

近視の本当の原因は?

今回は論文ではなく、Natureのニュースサイトですが、興味深い内容なので簡単に紹介します。

突然ですが、皆さんの視力は良いほうですか?世界中で近眼の人は増えていて、特にアジアでは多く、中国や韓国の一部地域では90%以上が近眼なんていうケースがあるそうです。従来、近眼の原因として、本を顔の近くに持ってきて読むとか、テレビやゲームのやり過ぎが挙げられてきました。しかし、実は近眼の本当の原因はこういったものではなく、単純に外で過ごす時間が少ないからではないかということを示唆する結果が出てきました。

近眼のメカニズムを簡単にすると、基本的には光が網膜よりも前で集光してしまうものです。これは眼球が少し伸びてしまうことによって起きます。生まれてから20歳くらいまでは眼球のサイズが大きくなる時期でもあるため、この時期に近眼になるケースがほとんどです。

原因については不明確で、遺伝的な要因もあります。他にも以前から目を酷使することで近眼になると言われてきました。
実際、学力の高い人(本を読む時間の多い人)ほど、視力が悪くなる傾向がありました。しかしながら、2000年代初頭に実際に調べてみたところ、本を読むなどの行動は大きな要因ではないということが明らかになってきました。代わりに、2007年に外ですごす時間が多い人は、本を読む時間などに関係なく視力が落ちないという結果が出てきました。さらに、鶏やサルに生まれてからずっと目に入ってくる光を制限し続けたところ近眼になったことから、光が重要なのではないかと考えられ始めています。実際、子供に外で過ごす時間を増やすようにすると、近眼になる人が少なくなるそうです。まだ具体的なメカニズムは不明ですが、強い光を目が受け取ると、網膜ドーパミンがつくられ、それが眼球の計上に関わるのではといわれているそうです。

不明な点は多いですが、もしこれが事実なら外などの強い光の下でならどんなライフスタイルであっても近視にならないということになります。常識が覆されそうです。近視は不便なだけでなく、ひどい場合は緑内障や網膜剥離の原因になることもあります。決してなめてはいけない病気です。

元の記事
The myopia boom

ヒトの遺伝子に他の生物由来の遺伝子がある

ヒトゲノムの配列が解読されて十年あまり経ちましたが、今でもヒトゲノムに関する知見は増えています。今回新たに見つかったことは、他の生物由来の遺伝子がヒトゲノムに存在するということです。

遺伝子の伝達には2種類あり、一つは通常の親から子への遺伝です。もう一つは遺伝子の水平伝播と呼ばれる、他の生物からの遺伝子の伝達で、バクテリアでは良く見られます。高等な生物でも起きるのではないかと考えられてはいたのですが、それを証明するのはなかなか難しい問題でした。今回、著者らはハエからゴリラ、ヒトまでの40種の動物のゲノムを調べました。各生物の遺伝子が他の動物のゲノムに近いか、それとも非動物(細菌や植物など)のゲノムに近いかを調べていき、非動物のゲノムに最もよくマッチしたものを水平伝播によって獲得した遺伝子であると解釈しました。その結果、ヒトには145個の遺伝子で、他の動物には見られず、バクテリアやウイルスなどの非動物のゲノムに近いものが見つかりました。

以前からヒトゲノムにはウイルス由来と思われる配列があることは良く知られていました。しかし、バクテリアや単細胞生物由来の配列があるということで、生命の進化は系統樹でかけるような単純なものではないと考えられます。さらにこの結果から、高等生物の進化の手段として遺伝子の水平伝播が存在するということを示唆しています。

元の論文
Expression of multiple horizontally acquired genes is a hallmark of both vertebrate and invertebrate genomes
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