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No,11 ユビキチンのセントロメアにおける役割

今回の論文
Centromeric histone H2B monoubiquitination promotes noncoding transcription and chromatin integrity
Laia Sadeghi, Lee Siggens, J Peter Svensson & Karl Ekwall
Nature Structural & Molecular Biology (2014)


簡単に言うと、
H2Bのモノユビキチン化セントロメアのクロマチン制御や転写に重要であることがわかりましたという内容。

背景として、
セントロメアというのは細胞分裂の際にみられる、2本の染色体が交差する部位で、染色体の分配に重要。この領域は配列というよりもエピジェネティックな情報が重要で、CENP-AというヒストンH3のバリアントが組み込まれる部位がセントロメアとなる。セントロメアはいわゆるヘテロクロマチンという状態をしており、転写が起きにくいが、ncRNAが転写され、それがヘテロクロマチン状態の維持に重要となる(前回の記事を参照)。今回新たにH2Bub1がセントロメアに存在することを発見。H2Bub1は転写活性だけでなく、DNAの複製、修復など様々なことにかかわる。それがセントロメアからなくなると、CENP-Aが取り込まれなくなり、ncRNAの発現も起きなくなる。結果として染色体の分配が適切にできなくなることが判明。

具体的には、
まずは酵母を使い、ユビキチン化が起きるアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えてユビキチン化を起きなくさせた。すると、セントロメアでのH3K9me2レベルが上昇していた。さらに調べてみると、CENP-AとH3の交換ができなくなり、CENP-Aのレベルが減少していた。
細胞周期を同調していない細胞ではセントロメアにおけるH2Bub1レベルは低かった。そこで細胞周期を同調してみると、G2/M期で高くなり、同時にRNA pol IIレベル、セントロメアRNAの発現レベルも高くなっていた。セントロメアRNAの配列をura4に置き換えてみると、同様の発現であり、H2Bub1はpol IIのアクセスを可能にし、転写を行っていると考えられる。H3のターンオーバーをみてもH2Bub1は一時的にヌクレオソームをどかしてpol IIのアクセスを可能にしているようだった。
セントロメアの機能である染色体の分配に注目してみると、マイクロチューブ阻害剤に対する感受性が高く、適切な分配ができなくなる割合が高くなっていた。
ヒトの細胞を使ってみても同様の結果が得られた。

個人的には、
昨日に続きセントロメアのクロマチンについてを取り上げたが、昨日の記事と異なりすっきりする内容。ヒストン修飾でユビキチンが取り上げられるのは珍しいしとおもって読んでみた。人の細胞でもヒストンユビキチン化あるんだね。自分の取り組んでいる実験と似ている部分もあり、アプローチ等の点で参考になった。時間をもう少し使えれば自分の論文もこのレベルのジャーナルに出せるのか?と思うと元気が出た。でも時間の都合上もう少し低いジャーナルじゃなきゃダメなんだろうけど。
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No.10 インシュレーターRNA

今回の論文
Noncoding RNAs prevent spreading of a repressive histone mark
Claudia Keller, Raghavendran Kulasegaran-Shylini, Yukiko Shimada, Hans-Rudolf Hotz & Marc Bühler
Nature Structural & Molecular Biology 20, 994–1000 (2013)

簡単に言うと
酵母でヘテロクロマチンとユークロマチンの境界でヘテロクロマチンの拡散を防いでいるncRNAを発見しましたという内容。

背景として、
昔は遺伝子はDNAの中でもたんぱく質の情報が書き込まれた部分で、RNAを介してたんぱく質になるものと考えられてきた。最近ではたんぱく質にならないRNAが細胞内に大量に存在し、しかもRNAのままで機能を持っているとことが明らかになりつつある。今回見つかったBORDERLINEというRNAもその一つ。
DNAの中にはヘテロクロマチンと呼ばれる領域とユークロマチンと呼ばれる領域があり、それぞれ、遺伝子発現量が低いあるいは高くなる。動原体になるセントロメアという領域は基本的にはヘテロクロマチン。このヘテロクロマチンの形成に重要なのがswi6 (HP1)というたんぱく質で、ヒストンH3K9me2/3と結合し、さらに隣のヒストンメチル化することで徐々にヘテロクロマチン領域を拡大していくとされる。ゲノム中にはヘテロクロマチンとユークロマチンがあるので、その境界も当然存在する。その境界領域がどうやってヘテロクロマチンの拡大を防いでいるのかというのは重要なポイント。
以前、このチームはswi6がRNAと結合することができ、そうするとH3K9me2/3と結合できなくなることを発見。もしかしたら境界領域ではswi6がRNAすることでヘテロクロマチンが拡大されなくなっていると考え、調べたところ、その通りでした。

具体的には、
まず、H3K9me2/3と結合するが、RNAとは結合できない変異swi6を発現する細胞を樹立(swi6*とする)。この細胞と普通の細胞のH3K9me2を比較すると、第1染色体のセントロメアの周辺でH3K9me2レベルが高くなっていた。これはRNAと結合できなくなることでヘテロクロマチンの拡大を防ぐことができなくなったためだろうと考えた。
次にswi6と結合するRNAを調べたところ、境界領域からncRNAが発現していることを発見。このRNAをBORDERLINEと命名。BORDERLINE領域をura3という遺伝子に置き換えたところ、ura3でもヘテロクロマチンの拡大を防げた。つまり配列には無関係にRNAと結合し、ヘテロクロマチンの拡大を防いでいる。ura3の発現を高くすると、バリア活性が高くなることも確認。
他のlncRNAはDicerによってsmall RNAになることがある。BORDERLINEの場合もDicerで切られてsmall RNAになっていた(このsmall RNAをbrdrRNAと命名)。brdrRNAについてさらに調べてみると、swi6*ではbrdrRNAが発現しなくなり、Ago1に組み込まれないことがわかった。
以上のことからBORDERLINEはDicerによってbrdrRNAになり、Ago1ではなくswi6に取り込まれ、ヘテロクロマチンの拡大を防いでいるというモデルを提唱。

個人的には
新規性が高いことは認めるけど、なんだか腑に落ちない部分がある。結局swi6とBODERLINEあるいはbrdrRNAが境界で結合しているという証拠もないし、配列に関係なくswi6とRNAが結合してしまうなら他のRNAがこの現象を引き起こしている可能性がある。煮え切らない感じ。インシュレーターのように働くRNAは未知だったし、面白みには欠けるけど大切な発見ではあるなとは思う。

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No.9 ルテニウムで二酸化炭素の有効利用

今回の論文
Ruthenium-catalysed alkoxycarbonylation of alkenes with carbon dioxide
Lipeng Wu, Qiang Liu, Ivana Fleischer, Ralf Jackstell & Matthias Beller
Nature Communications 5, Article number: 3091

簡単に言うと、
ルテニウムを使って二酸化炭素を化学製品の作製に使えるようにしましたという内容。

背景として、
今回はエステルの合成に注目。エステルはR-COO-R’という結合のことで洗剤など様々なところに使われている。一般に、エステルの合成には一酸化炭素(CO)が使われていたのだが、これは人体にとって有害な物質であり、引火性もあって危険である。実際、バイエルというドイツの会社が一酸化炭素のパイプラインを作ろうとしたところ、地域住民の反対にあい、作るのを断念したという例もある。なので、代わりに二酸化炭素を使えないかと考えた。今回ルテニウム(ドデカカルボニル三ルテニウム)という入手しやすい元素があり、これで触媒させると、二酸化炭素を一酸化炭素の変わりに使え、しかも性能も良かった。なので今後エステル製品が安く安全に作れるようになるというニュース。

具体的には、
様々なアルケンのカルボニル化反応を高温、高圧下でルテニウムを触媒とし、CO2とアルコール溶媒を混ぜた状態で行ったところ、還元剤なしでも高い収率が得られた。様々な条件で試してみたが、収率が53-91%と非常に高く、様々なアルケンに適用できた。
コントロール実験としてアルケンなしで同様の実験を行った。すると、CO2とメタノールからCO、水素、メチルフォルメ-トが合成されていた。つまり、その場でCO2からCOを作り出すことでエステル化が出来たということが明らかになった。念のためアイソトープを用いた実験でカルボニル基の炭素がCO2由来であることも確認している。


個人的には、
安定な構造をしている二酸化炭素が簡単に利用できるようになったのがポイント。化学は詳しくないけど、C1ソースとして二酸化炭素の利用が進むならデメリットも少ない、良い話じゃないかと思う。特にCO2の排出に対してうるさい人達もたくさんいるだろうし。

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No.8 小児膠芽腫のメカニズム

今回の論文
Inhibition of PRC2 Activity by a Gain-of-Function H3 Mutation Found in Pediatric Glioblastoma
Peter W. Lewis, Manuel M. Müller, Matthew S. Koletsky, Francisco Cordero, Shu Lin,
Laura A. Banaszynski, Benjamin A. Garcia, Tom W. Muir, Oren J. Becher, C. David Allis
Science VOL 340 17 MAY 2013


簡単に言うと、
小児膠芽腫という病気で見られる変異はPRC2というタンパク質の働きを阻害するということが分かりましたという内容。

背景として、
小児性膠芽腫というのは脳内に腫瘍が出来る病気で、子供のときに発症し、大人になる前に死んでしまうことがほとんど。この病気の患者は、ヒストンH3.3という、細胞核内に多く見られるタンパク質の端から27番目のアミノ酸がメチオニンに変異しているケースが多いことが明らかとなっていた。ヒストンの27番目のアミノ酸はリジンというものでメチル化(-CH3)されることが知られている。H3.3の27番目のリジンのメチル化は発生に非常に重要な役割を担っていて、これにポリコームというタンパク質群が関与している。今回、H3.3の27番目のリジンがメチオニンに変異することでポリコームの中心的なタンパク質であるPRC2の活性が抑制されていることが明らかとなった。今回の事例は遺伝的な変異によってエピジェネティックな状態が大きく変化する病気があるという例である。

具体的には、
小児膠芽腫の患者とマウスの細胞内ではH3K27me3が大きく減少し、H3K27acはやや増加し他の修飾では変化はおきていないことが分かった。
次に培養細胞を使い、H3.3, H3.3K27M, H3.3K27Rを発現させた。すると、H3.3K27Mを発現させたときのみH3K27me2とme3のレベルが減少していた。さらにリジンを他のアミノ酸に変異させたヒストンを発現させると、K27I, K27MのときのみH3K27me3のレベルが減少していた。他のバリアントでもK27M変異を起こすとK27me3レベルが減少していた。
次にK27Mの変異があることでK27me3が減少しているのはメチル基転移酵素の活性が抑制されているからではないかと考え、in vitroでの実験を行った。K27Mのヌクレオソームに転移が起きないのはもちろん、K27Mのペプチドがあるだけでヒストンへのメチル基の転移が抑制されていた。
さらに詳しく調べると、PRC2のうち、EZH2というサブユニットが阻害されていることが判明。特にチオエステル基が重要らしく、人工アミノ酸のノルロイシンに置き換えるとさらに阻害効果が高まった。EZH2はSETドメインがあり、他のSETドメインをもつSUV39hやG1aもK9Mペプチドで阻害された。K->Mの変異をK4, K9, K36に導入しても、やはりメチル化が阻害された。

個人的には、
不思議に思うことが2点ある。まず、データを見ると、グローバルなH3K27のメチル化の抑制がK->M, K->Iの変異のときだけ起きるのかという点。他のアミノ酸でもメチル化されなくなるので全体としては減りそうだけど、この2パターンでしか見られない点。たぶん構造的な理由があるのだろうけど。もう一つは小児膠芽腫とPRC2の活性の抑制が関連しているとしたら、それがH3.3上のリジンの変異の際におきるという点。過去の報告にはH3.3にはアセチル化などの発現を活性化する修飾が多いことが示されており、H3.3K27はメチル化されにくい。したがって、H3.3上の変異によってK27acが減少するはずなのに、減らないのが不思議。H3.3の変異の変異によって発症している例が多く、H3.1/H3.2への変異によって発症しているケースが少ないという点も不思議。ヒストンバリアント間のクロストークのようなものがあるのかもね。興味深い。この病気のメカニズムが分かっても治療はまだまだ先だな。遺伝子に変異が入ると治療は厄介だからね。

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No.7 体内時計のコントロール

今回の論文
Circadian behavior is light-reprogrammed by plastic DNA methylation
Abdelhalim Azzi, Robert Dallmann, Alison Casserly, Hubert Rehrauer, Andrea Patrignani, Bert Maier, Achim Kramer & Steven A Brown
Nature Neuroscience (2014)


簡単に言うと、
体内時計は光によってコントロールできるけど、これにDNAメチル化が関わっていたという内容

背景として、
体内時計(概日リズム)は視床下部の視交叉上核というところで制御されており、細胞レベルで見てみると、遺伝子の転写と抑制のフィードバックループで制御されていると考えられている。人の場合、24時間周期であり、これは遺伝的に決められていると考えられていたが、最近、光で周期がコントロールすることが出来ることが明らかとなったが、そのメカニズムが不明。
DNAメチル化DNAのシトシンにメチル基(-CH3)が付くことで、このマークが付くとそこにある遺伝子は使われなくなる。このマークは分化や発生とともに変化しており、人の場合、数年というスケールでゆっくり変化するものと考えられていた。ただ、最近脳でもっとダイナミックに変化していることがわかってきた。そこで、今回は体内時計DNAメチル化の関係に着目したところ、DNAのメチル化にコントロールされていることが判明。

具体的には、
まず、マウスの体内時計を22時間、24時間、26時間にしたグループを用意し、活動が活発になる周期がそれぞれの体内時計と同じになっていることを確認。
次に体内時計の周期が22時間、24時間のマウスの遺伝子発現を調べた。受容体、リガンド、転写因子の発現に差が見られ、カテゴリーで言うと神経やクロマチンリモデリング因子に変動が大きかった。
次にこの転写の変動に対するDNAのメチル化の影響を調べた。中枢神経では活動が活発なときとそうでないときを比べても変化は見られないが、体内時計を22時間と24時間にセットしたマウスを比較すると1,294箇所で変化が主に神経機能関連遺伝子周辺で見られた。そしてそのメチル化によって発現変動が起きていることも確認できた。
最後に、DNAのメチル化が概日リズムの制御に必要か調べるためにDNAメチル化阻害剤を使用した。すると、活動時間がDNAのメチル化が減少するとともに、活動時間の周期の変動が小さくなっており、体内時計のコントロールにDNAのメチル化が関わっていることが明らかに。

個人的には、
どうやって時計遺伝子のところだけDNAのメチル化を制御できるのかは興味深い。簡単にコントロールできるようになったら朝起きるのがつらいということも無くなるのに。だれか方法を開発してくれー!

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増刊号 詐欺師はクリエイティブ?

情報元
Here's Why Cheaters Are More Creative Than You

内容
今回はScienceというジャーナルのニュース欄から。
なぜ、詐欺師はあなたよりもクリエイティブなのかという話。この記事は心理学系の雑誌に掲載された論文のニュース。詐欺師は良くも悪くもルールに縛られずに考えられるから普通の人よりもクリエイティブなのだとか。被験者に不正を働かせると、不正していない人よりクリエイティブになったとか。うーん。クリエイティブになりたいという人はたくさんいんるだろう。詐欺みたいな犯罪を働く人が横行している世の中のほうが、クリエイティブな環境であるのだろうか。多少は必要悪として詐欺・不正行為に対して目を瞑らなければいけないのか?うーん。それもいやだな。

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増刊号 優秀な子供を育てるにはまず話しかけよ!

情報元
ScienceShot: Why You Should Talk to Your Baby

内容
今回は、増刊号。
論文ではなく、AAAS(アメリカ科学振興協会。Scienceという雑誌を出版している組織)の年会でのレポートから。
スタンフォード大学のAnna Fernaldによると、言葉を理解するはるか前のときから親に頻繁に話しかけられた子供は将来成績優秀で、社会的に成功する傾向があるそうです。2~3才の時点で言語処理能力に差が出始めるそうです。
分子レベルで見た場合、もしかしたら脳の細胞にエピジェネティックな変化が起きている可能性もありますね。もし生まれて間もないお子さんがいる方は積極的に子供に話しかけましょう。

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No. 6スマホで水質検査

今回の論文
Detection and Spatial Mapping of Mercury Contamination in Water Samples Using a Smart-Phone
Qingshan Wei, Richie Nagi, Kayvon Sadeghi, Steve Feng, Eddie Yan, So Jung Ki, Romain Caire, Derek Tseng, and Aydogan Ozcan
ACS Nano, AOP


簡単に言うと、
スマホを使って水中の水銀を検出する装置を開発しましたという内容。

背景として、
水銀は人体(特に腎臓)に有毒な物質で、水中に溶け込んでいるかどうかを簡便に安価に検査できる必要がある。特に、水銀は体内に蓄積していくため、ごく微量でも検出できる技術が必要。そこで、金粒子とアプタマー(短い一本鎖DNA)で水銀イオンを発色させ、523nm(緑)と625nm(赤)の光をLEDで当てて、その色をスマホのカメラで検出する装置を作製したところ、3.5ppb(1ppb=1ug/Lくらい)レベルで検出できた。(WHOは飲み水として6ppb以下を推奨しており、検査には十分な感度)この装置を使ってカリフォルニアの50箇所の水源の水銀汚染マップも作製した。水銀汚染の検査にばっちりですよ。

具体的には、
装置を作ったというところは画像を見てください。原理としてはアプタマーと金粒子が結合しているときは赤い色をしているが、そこに水銀があるとアプタマーが外れて、青っぽい色に変わるというもの。この現象は水銀イオンでのみ見られ、他の重金属があっても結果に影響しない。カリフォルニアの水源を見ていくと、水銀濃度が海で高くなる傾向があった。

個人的には、
アプタマーの応用例として選んだ論文。私の専門とは全く違う内容で、正直に言うとしっかりと読んではいない。でも思ったより感度良く検出できるんだなあという印象。コストは安そうなので、もう少し感度が良くなれば国内の自治体とかでも使っていけるだろう。後は他の重金属も検出できると良いかな。

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No.5 ミトコンドリアと寿命

今回の論文
Mitoflash frequency in early adulthood predicts lifespan in Caenorhabditis elegans
En-Zhi Shen, Chun-Qing Song, Yuan Lin, Wen-Hong Zhang, Pei-Fang Su, Wen-Yuan Liu, Pan Zhang, Jiejia Xu, Na Lin, Cheng Zhan, Xianhua Wang, Yu Shyr, Heping Cheng & Meng-Qiu Dong
Nature (2014)

簡単に言うと、
線虫の寿命ミトコンドリアを見れば分かるという内容。

背景として、
ミトコンドリアは細胞内でエネルギー合成をしている小器官。結構昔(1972年)からミトコンドリアが生き物の時計みたいなもので、寿命を決定しているのでは?という意見があったが、証明できていなかった。最近、ミトコンドリアはミトフラッシュ(mitoflashと書く。正しい日本語訳がないのでそのままにします)という現象を示すことがわかった。ミトフラッシュはスーパーオキシド(活性酸素の一種)が大量に作られる現象で、いつ起こるかは確率的である。ただし、酸化ストレスや代謝物の変化があるとその頻度が高くなる。今回、このミトフラッシュと寿命の関係を比較してみると、生後3日(線虫は9日位から死に始める)の段階でのミトフラッシュの頻度から寿命が予測できることが分かったという発見。
ミトコンドリアの像
ミトコンドリアの像(wikipwdiaより)

具体的には、
まずミトフラッシュは咽頭部の筋肉で最も活発で、哺乳類で見られるミトフラッシュと同様の現象が見られた。つぎにミトフラッシュと年齢という観点から見ると、生後2-3日(産卵期)と8.5-9.5日(死に始める時)でミトフラッシュの頻度のピークが見られた。寿命が通常よりも長い、あるいは短い遺伝子変異を起こした線虫でミトフラッシュを見てみると、長寿命の線虫は最初のピークでの頻度が低く、少し遅れて出てくるのに対し、短命な線虫では最初のピークが強く、やや早い段階で見られた。
次に寿命に関与する他の因子でもミトフラッシュのピークに変化が出るか調べた。すると、3日目のミトフラッシュの頻度と寿命の関係を回帰モデルで説明でき、負の相関関係があることが判明し、様々な要因があっても3日目のミトフラッシュの頻度で寿命を予測できることが判明した。
ここまでは、たくさんの線虫をまとめて観察していたが、次は一個ずつ調べたみた。やはり、負の相関があることが判明。
最後に長寿命の線虫の寿命が長くなった理由として、その線虫はでミトコンドリアがミーパーオキシドを作りにくくなるからだと結論付けた。したがってミトコンドリアが寿命を決定している。

個人的には、
人生の中で環境が大きく変化し、事故や病気のリスクがあるため、この結果をそのまま人につなげるのは前回同様難しい。でも人でもミトフラッシュがあるそうなので関係性は気になる。なぜミトコンドリアで寿命が分かるのかそのメカニズムは不明。最後のところで、ミトコンドリアが寿命を決定してると結論付けたが、そう言い切るにはもう少し、データが必要だろう。ミトフラッシュのタイミング等をコントロールできたら寿命が変わるという可能性は十分ある。一生涯に活動できるミトコンドリアの活動量が決まっているとかかな?一生涯のうちに心臓が打てる脈の数はどの動物でも一定という話に近い気がする。一定に仮にミトコンドリアが寿命を測る時計として機能しているとして、次の世代にはどうやって巻き戻されるのだろう?ES細胞とかには巻き戻す機構があるのだろうか。

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No.4 性と寿命

今回の論文
Males Shorten the Life Span of C. elegans Hermaphrodites via Secreted Compounds
Travis J. Maures, Lauren N. Booth, Bérénice A. Benayoun, Yevgeniy Izrayelit,
Frank C. Schroeder, Anne Brunet
Science 343, 541 (2014)

簡単に言うと、
線虫という生物では雄の分泌物が反対の寿命を縮めるという内容

背景として、
線虫は生物学では良く使われる生き物で、1mm程度の虫。線虫のは雄と雌雄同体の2種類がある(メスとはちょっと違う)。実は以前からハエや虫では、雌雄両方が共存する環境で育てると、雌(雌雄同体)の寿命が短くなることが知られていた。ハエの場合、交尾の際、雄の精液中にあるペプチドによって寿命が縮まり、虫では交尾による物理的なダメージによって寿命が縮まると考えられてきた。今回、実は交尾なしでも寿命が縮み、フェロモンのような分泌物によって寿命を縮めているらしいということが分かった。
C. elegans
線虫はこんな生き物(wikipediaより)


具体的には、
雌雄同体の線虫を雄と一切接触させないグループ、生まれてすぐから接触させるグループ、的に成熟する4日目から接触させるグループを比較すると、初日からでも4日目からでも、雄と接触のあるグループでは寿命が縮まっていた。他にも、動きが遅くなるなど、加齢によって見られる現象が頻繁に見られるようになった。さらに、寿命が長くなることが知られていた、インシュリン受容体遺伝子欠損株、生殖細胞欠損株でも、雄と一緒に飼うと寿命が短くなっていた。
次に、そのメカニズムを調べるため、生殖細胞を欠損させた線虫を雄の有無で育て、遺伝子の発現を調べた。雄と一緒に飼うことで主に神経系で使われる遺伝子に変化が見られ、交尾による物理的なダメージとは別の経路で寿命が短くなっているらしい。逆に発現があがった遺伝子を人為的に抑制すると、寿命は長くなり、特にINS-11というペプチドが重要であることを発見。
さらに物理的なダメージではないことを調べるため、一度オスの線虫を培地で育て、そこから雄の線虫を取り除いて、その培地で雌を育ててみたけど、やはり寿命は短くなったので、やはり雄から培地に分泌しているものが寿命を縮めている原因らしい。つぎにフェロモンを感知できない雌雄同体やフェロモンを作れない雄で、同様の実験をしてみたけれど、寿命は短くならなかった。したがって、フェロモンのような分泌物によって寿命を縮めていると結論付けた。
最後に、進化的に近縁な他の線虫でも試したが、同様の結果が得られた。雄の分泌物による雌雄同体の寿命を短くする作用は進化的に(少なくとも線虫では)保存されている現象である。

個人的には、
寿命を決めるのは様々な要因があるので(次回ミトコンドリアと寿命の関係についての論文の解説します)一概に言えないが、興味深い。人ではフェロモンは見つかっていないし、人でも同じ現象があるかというのはまったく別の問題ではある。長生きしたい女は試しに男と一切接触しない人生を送ってみてはいかがだろうか。そんな生活は難しいし、私が女だったら絶対にいやだけど。もしかしたら男女別学の学校というのは寿命という観点からみると理にかなっているのか?

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