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ダウン症のトランスクリプトームとエピゲノム

ダウン症トランスクリプトームエピゲノムに関する報告がありました。今回はこの2つを紹介します。

ダウン症比較的よく起きる遺伝的な病気であり、どのような症状になるかは皆さんもご存じだと思います。原因は染色体が一つ多くなることで、21番染色体が多いケースが頻繁に見られます。しかし、考えてみると、遺伝子がなくなる場合に病気になるのはわかるのですが、増えはしているけれど遺伝子が足りないわけではないのになぜ病気となるのでしょうか。仮説の一つとして遺伝子量効果のためではないかといわれています。これは通常、父親由来の染色体と母親由来の染色体がどちらの遺伝子をどのくらい使うかというのを調節しているという考えで、トリソミーではこのバランスが崩れ、遺伝子の発現プロファイルが大きく変化してしまうのだろうというものです。その考えに基づいてこれまでもダウン症患者と健康な人の遺伝子発現の変化は調べられてきました。しかし、遺伝子発現はDNA配列等の違いによる個人差があり、正しく評価できませんでした。

そこで今回、一卵性双生児なのに片方が正常、もう片方がダウン症という稀有な人たちを使って遺伝子発現を比較しました。遺伝子発現の変化は21番染色体以外にもみられ、遺伝子発現が大きく変化した領域を見ると、意外にも、ドメイン構造をとっていました。つまりある領域では遺伝子発現が減少するのに対し、その隣では上昇するという分布が見られたのです。遺伝子の種類でみると、もともと発現レベルが高いものは低く、低いものは高くなる傾向が見られました。
その後、他の細胞でもこのようなドメイン構造が存在するか調べるため、この双子の皮膚細胞からiPS細胞を作製しました。その後iPS細胞の遺伝子発現を調べましたが、同様にドメイン構造を保っていたそうです。さらに他の生物種でも確認するためにマウスのダウン症モデルで調べたところ、同様にドメイン構造があり、シンテニー領域では保存されていました。
他の双子ではない無関係のダウン症の人と正常な人の遺伝子発現を比較してもこのようなドメイン構造は個人差で隠されてしまったそうです。
次に、これまでに報告されているドメインと比較しました。核膜のタンパク質であるラミンとくっつく部分がドメインになっているので、これと比較しました。ラミンとくっつくところは、ダウン症患者で遺伝子発現がたかくなり、くっつかないところは逆に低くなった領域だったそうです。このことから、余計な染色体が入ることで、ラミンとくっつく位置が変化し、このような結果になったのではと考え、ダウン症患者の皮膚の細胞内で、ラミンとくっついているDNAはどこかを調べました。しかし、正常な人とダウン症患者に顕著な違いは見られなかったそうです。
ラミンのような高次の構造による影響が見られなかったので、クロマチンレベルでの違いに注目しました。まずはDNAのメチル化を調べたのですが、遺伝子の発現レベルの違いを説明できるほど大きな変化はありませんでした。次に遺伝子発現を促進するマークであるH3K4me3を調べてみると、今回見つかったドメインと相関がみられました。最後にDNaseI hypersensitive siteを調べたところ、ダウン症患者ではDHSが多くなっていました。(ただし、必ずしもその領域の遺伝子発現が増えているわけではありません)。以上のことから、トリソミーではクロマチンレベルでの変化がおき、それにより遺伝子発現が変化し、その変化度合いによって症状の重篤度が変化するという結論。

長くなってしまったのでもう一つは簡潔に書きます。
ダウン症はB細胞急性リンパ性白血病のリスクが通常の20倍以上になります。しかし、それはなぜでしょうというのが問題です。今回の実験ではマウスを使っていますが、人の21q22にある31個の遺伝子に相当するマウスの遺伝子が、3つ存在することで、B細胞前駆体の自己複製能力が上がってしまい、成熟できなくり白血病につながっている。さらに21q22が3つあることでB細胞前駆体でも白血病B細胞でもH3K27me3が減っており、H3K4me3とH3K27me3が両方存在するbivalent領域での制御ができず、その部分の遺伝子の発現が上昇していたなくなっていた。最後に21q22にあるHMGN1というヌクレオソームリモデリングタンパク質が過剰発現すると、H3K27me3が減少し、急性白血病を促進しているとのこと。

先に紹介した論文ではH3K4me3を見ていたけど、こっちでもH3K27me3が減少しているのかな?bivalentクロマチン領域での制御ができなくなっているというのは興味深い。

元の論文
Domains of genome-wide gene expression dysregulation in Down’s syndrome
Triplication of a 21q22 region contributes to B cell transformation through HMGN1 overexpression and loss of histone H3 Lys27 trimethylation
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