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走れば弱視は治る?

元の論文
Running cures blind mice

五個ある感覚の中で、人間は視覚をもっとも頼りにしています。目が見えるようになるためには目そのものや目の神経だけでなく、脳の視覚野が発達している必要があります。実は発生初期に両目から刺激を受けたときだけ視覚野が発達し、例えばまぶたがたれていて片方だけしか刺激を受けなかった場合、ほとんど何も見えない弱視という病気になってしまいます。近年、様々な研究からランニングをすると脳の可塑性があがるという報告がたくさん出てきました。可塑性とは、脳の機能的あるいは構造的な変化をおきる性質のこと。例えば脳のネットワークが変化することも可塑性と呼ばれます。今回、筆者らはそれならば運動することで視覚野も可塑性が上がるのではないかと考えたそうです。

実験には生まれてからずっと片目だけで生活させ、弱視になったマウスを使いました。このマウスを普通に育てたグループと視覚野を刺激する映像+ランニングのグループに分け、脳の活性を調べました。すると、映像+ランニングのグループは2週間程度で正常なマウス並みの視覚野の応答性が見られました。一方で特に何もしなかったほうは、視覚野の応答性の回復がもっとゆっくりしたものでした。ただし、映像のみあるいはランニングのみではあまり効果がありませんでした。さらに運動中に見せる映像をただのノイズと、棒がただ横に(下かも知れません)ながれていくだけの2種類に変えると、ノイズをみせたマウスはノイズの映像だけに反応し、棒の映像を見せたマウスなら棒の映像だけに反応しており、ランニングしているときにみた映像にだけ反応するようになりました。

今回の研究では少なくともマウスにとっては走っているときに何を見ているかが重要であることが分かりました。人の場合どうかはまだ不明です。しかし、今回の研究が示唆していることは運動中にどんな刺激を受けるかが重要であるということです。もしかしたら音楽を聴きながら走ればその音に反応するようになり、飴などを走りながらなめればその味に対する反応性が変わる可能性があります。これからは走るときは自分に役立ちそうな刺激を与えながらだと良いのかもしれません。

元の論文
Sensory experience during locomotion promotes recovery of function in adult visual cortex
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テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

世の中顔がすべて。病気だって顔見れば分かる。

情報元
Photos of faces reveal rare disorders

以前「世の中顔がすべて。知能だって顔見ればわかる。」という記事を書いたことがありますが、今回は顔を見ればレアな遺伝病を特定できるという内容です。

遺伝子(染色体)異常があると特徴的な顔立ちになることは良くあることです。例えば比較的身近な例ではダウン症の人は特徴的な顔立ちになることは皆さんも知っていると思います。でもダウン症患者でも一見して分からない場合もあり、健常者との違いが少ない病も少なくありません。そういった場合、ベテランの医師でも簡単には見抜けません。そこで、さまざまな遺伝病をもった患者の顔写真をスキャンし、機械学習アルゴリズムによって顔写真からどんな遺伝病を持っているか調べるプログラムを作ったそうです。

Faces.jpg
画像は情報元の記事より。遺伝病ごとの顔立ちの違い見抜けますか?

元の論文
Diagnostically relevant facial gestalt information from ordinary photos

テーマ:雑学・情報 - ジャンル:学問・文化・芸術

排気ガスのにおい=バラの香り(ただし蛾に限る)

嗅覚というのは非常に重要な感覚で、例えば食べ物を食べる前に腐ってないか確認することができます。一般にくさいと感じる匂いのモノは体に悪いものであることが多いです。例えば排気ガス。車の排気ガスは体だけでなく、環境を破壊していると非難されて久しいですが、他にどんな影響があるのでしょうか。今回、あの排気ガスの少し酸っぱいようなくさい煙が蛾にとってはバラの香りのような誘因作用があることが分かりました。

今回のターゲットはチョウセンアサガオとタバコスズメガ。この植物は香水に使われるくらい良いにおいがするものの、アルカロイドを含んでいるため、食べる意識障害が起きたりします。蛾はこの匂いに惹かれて移動し、その実を食べます。しかし、周りに車の排気ガスなどの他の匂いが混ざると、匂いの強さに差がない限り花のにおいと区別できずに迷ってしまうそうです。なぜ排気ガスと花の香りは全く違うのに間違えてしまうのかというと、どちらもベンゼン環を有する化合物が含まれており、残りの小さな差は区別できないのではとのこと。

今回の結果は蛾が花のもとにたどり着けなくなる可能性があり、栄養が取れずに正常な生育ができない可能性があります。これは排気ガスが環境に影響を与えるだけでなく、ダイレクトに生態系に影響を与えていることを示唆しています。特に野生の動物は人間よりも匂いに敏感で、他の生物にも混乱を起こしている可能性があり、著者はハチなどにも影響を与えていると言っています。車を完全に使わないというのは無理でも、自分の健康と他の生物のためにも、移動手段として自分の足を使ってみてはいかがでしょう。晴れた日なら病み付きになっちゃうかも。

元の論文
Flower discrimination by pollinators in a dynamic chemical environment

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髄芽腫ではエンハンサーがハイジャックされていた

タイトルにある髄芽腫とは、悪性脳腫瘍の一種で、子供の患者が多い病気です。この髄芽腫は発現しているタンパク質によって4つのサブグループに分けられます。そのうちグループ3と4が特に多く見られますが、どのガン遺伝子が使われているのか不明でした。今回、GDI1というガン遺伝子が発現しており、それはエンハンサーが乗っ取られているからだということが分かりました。

エンハンサーとは簡単に言えば遺伝子の使う量を調節している部分で、エンハンサーが作用すると、遺伝子が多く使われるようになります。エンハンサー自体はDNA上では遺伝子と離れたところにあるものの、細胞内では近くにいるというのが特徴です。まず細胞内でのゲノム構造の変化を調べていくと、染色体9番といくつかの既知のガン遺伝子周辺で見られました。そこで、詳細に調べていくと、9番染色体上にあるGDI1Bという遺伝子が髄芽腫のグループ3と4でのみ発現していました。その原因を調べていくと、GDI1遺伝子周辺でDNAの再構成が起きており、本来別の遺伝子を活性化するためのエンハンサーがGDI1の発現上昇に使われていました。。このGDI1遺伝子の発現が髄芽腫の原因であるか調べるため、GDI1とガン遺伝子のMYCを神経幹細胞に導入しました。GDF1あるいはMYCのみだと脳腫瘍はできませんが、両方を導入した時は腫瘍が形成され、数日で死に至りました。

エンハンサーが乗っ取られるという興味深い現象。この現象が報告されたのは今回が初めて。治療にはHATインヒビターとかでこのエンハンサーの活性を落とせばいいのかな?ちなみにハイジャックというのは乗っ取るという意味で、飛行機だろうがバスだろうがのっとると英語ではhijackという単語が使われます。だからバスジャックという言葉は正しくありません。たぶんhiとhighがごちゃ混ぜになったんだと思う。髄芽腫のDNAのメチル化に関する論文も出ているようなので気が向いたらこちらも取り上げるかもしれません。

元の論文
Enhancer hijacking activates GFI1 family oncogenes in medulloblastoma

太っていると難産になりやすい理由

太っていると難産で帝王切開が必要になるケースが多くなるというデータがあります。それは脂肪で産道が狭くなっているというわけではなく、子宮の筋力が弱いため自然分娩が難しいのです。しかし、肥満の人の子宮の筋力が低下する理由が不明でした。今回、それがイオンチャネルのためということが分かりました。

イオンチャネルはイオンを細胞内外に出し入れするタンパク質です。このイオンチャネルによって電位差が生まれ、筋肉を動かす刺激となります。今回、hERGというカリウムイオンチャネルが子宮の筋肉に存在することが確認されました。このイオンチャネルが活性化することで、子宮の収縮が抑えられていることが明らかになりました。子宮の収縮が起きる際は、これに拮抗する阻害タンパク質が増え、結果としてhERGの活性が落ち、子宮の筋力の収縮がおきるというメカニズムであることが分かりました。太っていると阻害タンパク質が増えず、hERGの活性が落ちないために子宮の筋力が上がらないのだそうです。

なぜ、太ると阻害タンパク質が増えないのかは不明ですが、おそらくエピジェネティックな制御に異変が起きたものと思われます。歯周病があると早産の危険性が高いという話もそうだし、今回もそうだけど、出産には女の人の健康状態が非常に重要であることがわかります。

元の論文
Diminished hERG K+ channel activity facilitates strong human labour contractions but is dysregulated in obese women

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紫外線でハイになる

夏が近づいています。紫外線の、日焼けの季節が近づいています。今回、紫外線を浴びると中毒になってしまうかもという報告がされました。

毛をそったマウスに紫外線を浴びせると血中のベータエンドルフィン(いわゆる脳内麻薬)が増えていました。しかもモルヒネを投与したときのように、ベータエンドルフィンが出ているために痛み等を感じにくい状態になっていました。マウスはオピオイド受容体(モルヒネなどの受容体。ベータエンドルフィンも受容する)が活性化すると、尻尾がピンと上方向に伸びる症状(straub tailと呼ばれる)が見られます。UVを照射しても同様なことが見られました。さらにナロキソン(麻薬やベータエンドルフィンの拮抗薬)を投与することで、痛みに対する反応やStraub tailも元通りになりました。またベータエンドルフィンの合成ができないノックアウトマウスではこのような症状は見られませんでした。

今回マウスに浴びせた紫外線の量は天気の良い日ならば普通に浴びる量です。天気の良い日に外を歩くと気持ちが良いものですが、それはおそらく紫外線によりベータエンドルフィンが作られているからなのでしょう。また、海などで日焼けをするときに、日を浴びている最中はあまり痛みを感じないけれど、あとで日焼けが痛くなるのは、ベータエンドルフィンにより無痛になっていたのが、日が落ちてから正常値に戻ったためでしょう。紫外線を浴びると気持ちよいだけでなく、ビタミンDの合成にも使われるため日に浴びることは良いのですが、過度に浴びれば発ガンのリスクが高まります。ほどほどにしましょう。

松崎しげる プロフィール
(紫外線中毒の患者。たぶん末期の状態。(松崎さん、ゴメンナサイ)

元の論文
Skin β-Endorphin Mediates Addiction to UV Light

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なぜストレスは心臓に良くないのか

ストレスは体に良くない。当たり前すぎていまさら何を言っているんだと思うかもしれませんが、なぜ良くないのでしょう?どうしてよくない効果が起きるのでしょうか。脳(心)と免疫に関係があると思われますが、詳しくは分かっていません。そこで今回慢性ストレスが造血幹細胞にどの様な影響を与えるかを調べました。

まず人の生死を決める極限状態に常に曝され、強いストレスを受けている集中治療室で働く人たちの血液を調べました。一週間ほどで血液中の白血球や好中球の数値が高く、造血幹細胞の活性が高くなっていました。マウスでも同様にストレスにより造血幹細胞の活性が高くなっていました。さらにメカニズムを調べると、交感神経が過剰のノルアドレナリンを放出し、ベータアドレナリン受容体を介してCXCL12(造血幹細胞のニッチを支えるタンパク質で、これが無くなると造血幹細胞の増殖・分化が始まる)を減らしていた。さらにアテローム動脈硬化を起こしやすいApoeノックアウトマウスを慢性的なストレスに曝すと、造血により動脈硬化が起きることが確認できた。

白血球や好中球の量を見ればストレスを感じているかどうか判別できるかもしれません。ストレス社会ですから、完全にストレスから逃れて生きるのは難しいです。できるだけ幸せな生活を送ってノルアドレナリンを過剰に出さずにいきたいものです。

元の論文
Chronic variable stress activates hematopoietic stem cells

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心を読む力は先天的?後天的?

今日はちょっといつもよりも科学っぽくない話を紹介します。
みなさんの周りには人の心(あるいは空気)を読めない人っていますか?なんでこんな発言(行動)をするのか理解できない人というのはいるもので、今は身の回りにいなくても過去に一度は出会ったことがあるのではないでしょうか。この人の心を読む力というのはどのようにして出来上がるのでしょうか。これまでもこの分野の研究がされており、字を読む読解能力のように学習していくものと主張する人と、生まれて間もない乳児でも人の心を読む能力があるのだから、先天的なものだと主張する人がいました。今回行動などから推測するような力は生まれつき備わっていて、言葉のような形で明確に表現されたことから理解する能力は言葉によって文化的に伝えられていくものだという提唱がされました。

今回は研究論文ではなく、Scienceに掲載された心理学のレビューです。内容は以下の通り。
・行動によるマインドリーディングの実験から考えるに、人間はマインドリーディングに使う脳機能というのは遺伝的に(先天的に)保有している。
・ただし、不明確なマインドリーディングは実行機能を必要としないことから、行動による不明確なマインドリーディングと言葉による明確なマインドリーディングのコントロールは違ったメカニズムである。
・そのような立場に(明確なマインドリーディングと不明確なマインドリーディングがあるという考え)立って考えると、これまでの実験から明確なマインドリーディングは文化的に受け継がれていくスキルである。

現在、日本では移民を受け入れるべきか否かという議論がされています。文化的に近い人であれば日本人と同じように空気を読めるでしょうが、全く異なる文化の人であれば、この能力は全く違います。そうなると、お互いの気持ちを理解することができず、衝突するという結果を招くでしょう。国際化だなんだと叫んでみても、やはり文化的な差に起因する違いは避けされません。個人的には日本の文化を捨てに西洋チックな文化に切り替えて衝突をさけるというのが正しいとは思わないし、単純に人が足りないから海外から受け入れるというのは安直すぎると思います。

元の論文
The cultural evolution of mind reading

たいして早くなかったD-wave

情報元
Quantum or not, controversial computer runs no faster than a normal one

みなさん、D-waveという会社をご存知ですか?カナダの会社で数年前に世界で始めて商用量子コンピュータを作った会社です。量子コンピュータについては私自身よく分かっていないのですが、既存のシリコンベースのものと違ってスピンなどの量子力学的な重ねをあわせを使い、計算しているそうです。これまでD-waveのコンピュータは様々な批判があり、真の量子コンピュータではないというものもあります。そこで今回、このD-waveの量子コンピュータの性能を調べた人がいるのですが、既存のコンピュータより早くはなかったそうです。

方法はある特定の問題をどんどんデータのサイズを大きくしていったときに、計算で解くのに必要な時間がどのくらい増えていくかを調べていきました。真の量子コンピュータであれば既存のどんなコンピュータよりもデータサイズがでかくなることに対して強いからです。今回、503キュービットのD-wave2を使いました。しかし、残念ながらスピードアップは見られませんでした。

じつは量子コンピュータというのはいつでもどんな問題でも早く解くことができるわけではないらしく、会社側は今回行ったテスト内容が良くないと言っているそうです。まだまだD-waveをめぐる議論は続きそうです。いずれにせよ、一台の値段も億単位だし、絶対零度付近まで温度を下げなければならないので我々個人が手にするのははるか先のことかもしれません。正直、今回の内容は私自身正確な理解ができていませんので、間違ってたらゴメンナサイ。参考程度にしておいてください。

元の論文
Defining and detecting quantum speedup

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抗トリパノゾーマ薬で自閉症が治るかも

情報元
Century-old drug reverses signs of autism in mice

以前ツェツェバエのゲノムが解読されたときに少し紹介しましたが、眠り病というトリパノゾーマが引き起こす病気があります。その治療薬として100年近く前にスラミンという薬が作られました。ただし、病原虫が中枢神経に移行する前で、かつ非経口投与でなければならないという制限があり、完全に眠り病を治せるというわけではありません。今回、このスラミンという薬で自閉症様の症状を見せるマウスを治せたという報告がありました。一度投与すれば完全に治るというわけではないようですが、大人になったマウスでも効果があったそうです。

自閉症の症状は簡単に言えば極度のコミュニケーション障害で、シナプスで信号が大量に押し寄せていて、適切な情報処理ができていないためとされています。今回は抗トリパノソーマ薬として知られるスラミンを自閉症のモデルマウスに投与する実験を行いました。(なぜスラミンを投与しようと思ったかは長くなるので割愛。情報元のサイトに詳しく書かれています。)
スラミンを腹腔内に20 mg kg−1 で生後6か月(人でいえば30歳くらい)のマウスに投与しました。すると、それまでに見られていた行動異常が収まりました。その後、スラミンを洗い流し5週間後の行動を観察してみたところ、多少良い状態ではありましたが、行動動異常が増えていました。次にスラミンが体内でどこに蓄積するかを調べると、血液と脳幹にみられ、大脳には見られませんでした。神経系でのスラミンの半減期が約1週間であり、マウスの行動異常が戻ったのがそのためだろうとのこと。スラミンはプリン拮抗薬であることから、メタボリズムも調べました。すると、メタボリズムも正常なマウスに近い状態になっていました。今回のモデルマウスでは特にプリン代謝経路が重要で、スラミン投与によって、18個あるプリン代謝経路のうち17個で正常な状態に近づいていたことも明らかになりました。

人とマウスは違うし、スラミンの長期の投与は貧血症を引き起こすとのことで、そのまま自閉症患者の治療に使うのが良いとは言えない部分があるそうです。しかし、プリン代謝経路が重要であることが分かったことで、どこか特定のプリン代謝経路を阻害する薬ができれば、副作用が少なく効果的な薬が開発できるのではないかと思います。

元の論文
Reversal of autism-like behaviors and metabolism in adult mice with single-dose antipurinergic therapy

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