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ガンは”伝染”する

今回ガンに関する新たな知見が得られました。ガンは健康な細胞を小さなRNAによってがん細胞に変えてしまうという物です。

ガンに限らず、細胞はエキソソームと呼ばれる小胞を分泌しています。中身はタンパク質やRNA、DNAなどで、不要物を捨てたり、細胞間のコミュニケーションを行うためと考えられています。ただ、ガン細胞は正常細胞よりもエキソソームが多いと報告されていました。そこで、今回の実験ではまず中身を調べてみました。すると、正常細胞よりも遺伝子発現抑制に関わるmiRNAが多いということが分かりました。ガンのエキソソームを取り出し、正常細胞に混ぜると遺伝子発現に変動が見られました。さらにヒトの乳がん細胞のエキソソームと正常な細胞を混ぜ、マウスに注射すると腫瘍が形成されました。正常細胞由来のエキソソームやmiRNAを作れない遺伝子改変細胞由来のエキソソームではこのようなことは起きませんでした。以上のことからガンのエキソソーム内のmiRNAがガン化を誘導しているという内容でした。

ガンは基本的に遺伝的な変異によるものが多く、ウイルスの「感染」によるものも知られていましたが、ガンからガンへ「伝染」するというのは新しく、非常に面白い考えではないでしょうか。もしかしたらガンの転移の原因になっている可能性もあります。ただし、正常細胞にどの様な変化を起こしているのか不明な部分も多く、さらに体内では正常細胞が圧倒的過半数であり、ガン由来のエキソソームを狙った薬というのは簡単ではないと思われます。どちらかというとガンの進行のモニタリングのためのマーカーという使い方のほうが使いやすいかもしれません。

元の論文
Cancer Exosomes Perform Cell-Independent MicroRNA Biogenesis and Promote Tumorigenesis
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