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ちいさな胃の作製に成功

胃の作製に試験管内で成功したという報告がありました。といっても豆粒よりも小さいサイズのものです。これはなにか他の生物の胃ではなく、ヒトの胃のミニチュアみたいなものです。

胃というのは生物によるばらつきが大きい器官です。例えば草食のウシは胃が4つもあったり、ヒトとは大きくかけ離れています。食べるものが違うので当然かもしれませんが、これは人の胃の研究をする際に、他の生物をモデルとして扱いにくいということになります。今回幹細胞から作製された胃は、小さいながらもしっかりと胃としての機能を持っており、ピロリ菌(潰瘍や胃がんの原因になる)に感染させれば、実際に人で見られるような分子、細胞の変化が見られました。作製方法としてはFGF, WNT, BMPレチノイン酸とEGFパスウェイの一時的な操作と3次元培養というもので、これで胃が作れるそうです。

そんなわけで胃の発生や病気の研究に役に立ちそうな研究でした。

元の論文
Modelling human development and disease in pluripotent stem-cell-derived gastric organoids
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核移植によるリプログラミングを妨げるH3K9me3

以前も紹介したことがあったかもしれませんが、細胞のリプログラミングには核移植による方法とiPS細胞のように遺伝子導入によって行う方法があります。核移植によって得た細胞は分化全能性があり(iPS細胞は分化万能性)、、クローン羊のドリーのように個体を作り出すことが可能です。そのため様々な分野でこの技術の利用が期待されています。ただ、現在のところ問題の一つはクローンを作る効率が低いこと。今回、筆者らはドナー細胞のH3K9me3を消すことで効率が非常に高くなることを発見しました。

まず、なぜクローンは出来にくいのでしょうか。クローンを作る方法は卵の核を取り除き、体細胞の核を移植し、in vitroで培養し、胚盤胞とよばれる構造体ができたところで子宮に戻すという段階に分かれますが、大きな問題は主に核移植した細胞を子宮に戻す前の発生段階にあります。特にzygotic gene activation(ZGA)という現象があるのですが、核移植によってリプログラムされた細胞はここがうまくいかないといわれています。ZGAとは1細胞期の受精卵では卵母細胞のmRNAやタンパク質を多く利用しているのですが、発生の途中(マウスの場合2細胞期で、ヒトの場合4細胞期)から自身のゲノムからRNAやタンパク質を作り出し始めます。この自身のゲノムを使い出すように切り替わる減少がZGAです。核移植でZGAがうまくいかない理由はあまり分かっていませんが、ドナー細胞のエピジェネティックなバリアによるものと考えられています。

今回の実験では、まず体外受精させたマウスの受精卵と核移植によって得た細胞の遺伝子発現を比較しました。1細胞期では大きな差は無いのですが、ZGAが起きる2細胞期からは受精卵と核移植細胞では発現に差がある遺伝子がかなり増えました。今回は特にZGAで活性化される遺伝子に注目しました。ZGAで活性化されるはず遺伝子のうち、核移植細胞で活性化するかどうかで、しっかりとリプログラムされた領域、部分的にリプログラムされた領域、リプログラムされなかった領域の3段階に分けました。このうちリプログラムされなかった領域では抑制的に働くH3K9me3がドナー細胞で多く見られ、H3K9me3がZGAを阻害するエピジェネティックなバリアである可能性を示しました。そこで、ヒストン脱メチル化酵素(KDM4D)のmRNAを核移植後に注入したところ、遺伝子発現も体外受精細胞に近くなり、クローンが出来る効率も非常に高くなりました。さらにH3K9me3のメチル化酵素にはSuv39hとSetdb1という2種類があるのですが、どちらがエピジェネテッィクバリアを形成する原因となるかを調べました。方法としては、核移植前にドナー細胞でSuv39hまたはSetdb1をノックダウンしてから核移植するという方法です。結果的にSuv39hのノックダウンでZGAが出来ないことによる発生阻害は大きく減るということが分かりました。

エピジェネティックバリアとしてはDNAのメチル化を見ている場合が多い(気がする)けど、ヒストンもやっぱり重要という話です。ただ興味深いのはiPSのリプログラミングにおいてはSetdb1がエピジェネテッィクバリアを形成する原因となるそうで、リプログラミング方法によってバリアとなるエピジェネティックスは違うのかもしれません。

元の論文
Embryonic Development following Somatic Cell Nuclear Transfer Impeded by Persisting Histone Methylation
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