スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

脳の損傷を直す細胞

人の幹細胞を使い、放射線によって損傷を受けた脳を修復することに成功しました。

がん治療には様々な方法がありますが、その一つに放射線治療があります。これは重粒子線などでガンを死滅させる方法です。もちろん正常な細胞へのダメージを極力減らすように工夫はしていますが、なくすことは難しいです。そのため、脳腫瘍の治療に放射線治療を行った場合、記憶力、注意力、学習能力に障害が見られます。特にミエリン(髄鞘とも呼ばれ、脳の電気信号の伝達を速める)がなくなってしまうことが原因になります。今回はオリゴデンドロサイト(ミエリンの形成にかかわる細胞)の前駆体細胞をES細胞から作製しました。その細胞を放射線によって損傷を与えたラットの脳に注入しました。すると、前駆体はオリゴデンドロサイトとなり、ミエリン(髄鞘)を再形成するようになりました。細胞を注入されなかったラットよりも、学習能力が高くなり、損傷を受けていないラットと同等まで回復したそうです。

この結果は放射線治療によって脳腫瘍が治った人にとっては有益になりそうです。注入した細胞が脳のパーツとなった点は基礎生物学的にも重要になるのではないでしょうか。

元の論文
Human Embryonic Stem Cell-Derived Oligodendrocyte Progenitors Remyelinate the Brain and Rescue Behavioral Deficits following Radiation
スポンサーサイト

新たな素粒子が発見される

プロトン間の高エネルギー衝突により、新たに2つの素粒子が見つかりました。

新たに見つかった素粒子はΞ′b− and Ξ*b−と名付けられました。これは大型ハドロン衝突器のLHCb実験チームが発見しました。陽子同様、この粒子は3つのクオークよりなっているのですが、この粒子は陽子よりも約6倍の質量をもつボトムクォークを含んでいます。標準的なモデルとしっかり一致するのですが、クオークの組み合わせが見つかっていないものでした。

このような粒子の性質について調べていけば、陽子と中性子を繋ぐ核力の正体をつかむのに役立つと思われます。

元の論文
Observation of Two New Ξ−b Baryon Resonances

ダークマターは恐竜絶滅の原因か

これまでの化石の記録を見てみると、恐竜の絶滅のように、地球上にいた生物が大量に絶滅した形跡があります。これは約2600万年から3000万年ごとの周期で訪れています。隕石などが降り注ぎ、生物の大量絶滅が起きたと考えられていますが、なぜ周期的に起きるのかは不明でした。今回、これにダークマターが関与しているのではないかとする研究が発表されました。

ダークマターとは電磁相互作用等がない、観察できない何かです。そもそも存在するかどうかも不明の、理論的な研究を説明するために導入された仮定上の物質です。太陽系が天の川銀河の円盤を通り抜ける周期も大量絶滅の周期とほぼ同じ周期で訪れており、円盤にはガスや星が大量に含まれているため、それが隕石として降り注ぐと考えられます。今回の仮説では、それに加え、円盤に含まれるダークマターの重力が小天体の軌道を乱し、恐竜絶滅を招いたとされるような地球への天体衝突を引き起こすのではないかと主張しています。また、円盤通過のたびに地球の中心核に蓄積したダークマター粒子が対消滅(粒子と反粒子が衝突し、エネルギーを他の粒子に変換される現象)して熱を生み、地球内部の温度を数百度以上上昇させます。これにより火山や造山活動、磁場の反転といった地球規模の変動を起こしたのではという理論です。

決定的な証拠があるわけではないけど、理にはかなっていると言えると思う。

元の論文
Disc dark matter in the Galaxy and potential cycles of extraterrestrial impacts, mass extinctions and geological events

人のDNAでマウスの脳が大きくなった

一体何が人を人たらしめるのでしょうか。この問いは哲学的でもありますが、やはり高い知能が人間を人間たらしめる、他の生物には無い特徴と言えるでしょう。高い知能には大きな脳が必要になりますが、今回、ヒトのDNAで脳のサイズが大きくなることが分かりました。

今回調べたのは遺伝子ではなく、エンハンサーと呼ばれる領域です。エンハンサーは近傍の遺伝子の発現を活性化させる領域です。今回は人とチンパンジーのゲノムDNAの比較や過去の論文から、脳で発現する遺伝子の近傍のエンハンサーを探し出しました。まず100個以上の候補を選んだ後、その約半数を胚期のマウスに挿入し、エンハンサーとしての活性の有無を調べました。そのうち、HARE5というエンハンサーは大脳皮質で特に活性化することが分かりました。HARE5はFrizzled 8という脳の発生に関わる遺伝子を活性化させているらしく、神経細胞の細胞分裂を促しているようです。これにより、HARE5を組み込んだ胚マウスではチンパンジーのエンハンサーと比較して、脳のサイズが約12%大きくなったそうです。

エンハンサーと表現型のかかわりを明確に示したのは初めてかもしれません。まだまだ不明な点は多く、エンハンサーとしての役割ではなく、エンハンサーからもRNAが作られるため、こっちの影響によるものかもしれません。いずれにしても、DNAのうち、遺伝子で無い部分の役割をこのような形で示す研究が増える予感がします。ところで、このマウスは成長したらちゃんと脳は頭蓋骨の中に入るだろうか。

元の論文
Human-Chimpanzee Differences in a FZD8 Enhancer Alter Cell-Cycle Dynamics in the Developing Neocortex

宇宙に始まりが無かったらどうなる?

アインシュタインの一般相対性理論によれば、宇宙は無限に凝集した一点からはじまり、それがビッグバンとして宇宙が広がったと考えられています。しかし、この宇宙が始まる前の点は存在するかが怪しい特異点であり、実際にこのような点が存在するかは疑わしいと考えられていました。今回これにかわる、新たな宇宙論が提唱されました。

新たな理論とは言っても、ビッグバンを否定しているのではなく、フリードマン方程式という量子力学の原理を取り入れることで、特異点が存在しなくてもビッグバンが説明できるとするものです。これによれば、宇宙は私たちがビッグバンと呼ぶ熱い、凝集した状態に崩壊する前の量子ポテンシャルの一種として永遠に存在するということになります。

これだけ見ると、ビッグバンがあったことを否定しているようにも見えますが、あくまでもビッグバンは爆発のようなものではなく、宇宙の初期の熱く、凝集した状態を意味しているため、この理論はビッグバンを否定しているわけではないそうです。私も完全に理解しているわけではありませんが、これによれば宇宙には始まりも終わりも無いということになります。うーん、哲学的で難しい。

元の論文
Cosmology from quantum potential
情報元
What if the universe had no beginning?

奇跡!​クロモスリプシス ​で先天的な免疫不全症が完治した

非常に特異な例が報告されました。WHIMという先天的な免疫不全症候群が完治したという内容です。しかもその方法がクロモスリプシスという染色体がバラバラになってしまう現象によるものです。

まずWHIMはCXCR4という、ケモカインという細胞間のメッセージとなる化学物質を認識する遺伝子に変異が入ることで起きる、まれな病気です。この遺伝子へヘテロに変異が入ることにより、通常なら刺激を受け、下流のパスウエイを刺激した後に、フィードバックによりもとに戻るのですが、変異があるとフィードバックを受け取れず、下流のパスウエイを刺激し続けてしまいます。これにより、白血球が骨髄から血液内に入ることができなくなり、結果、免疫不全になる病気です。クロモスリプシスとは最近見つかった現象です。染色体破砕ともよばれ、その名の通り、染色体がバラバラになり、配列が再編成される現象です。通常、クロモスリプシスを起こした細胞は死に至り、万一生き残ることができてもガン化するものと思われていました。今回、血液の幹細胞にクロモスリプシスが起き、これによって正常な白血球が作り出せるようになったWHIM患者が見つかったそうです。

クロモスリプシスについてはまだまだ知らないことが多く、現在の技術では治療に使用するのは無理な状態です。しかし、遺伝的な病気がなくなる可能性を秘めており、完璧にクロモスリプシスをコントロールできるようになれば、医療にとって非常に大きな進歩になりそうです。仮に再編成が難しくても、特定の染色体だけをバラバラにすることができれば、ダウン症のようなトリソミーの根治治療ができるようになるのではないかと考えられます。

元の論文
Chromothriptic Cure of WHIM Syndrome

体外受精による代謝の変化

不妊治療の一環としてよく行われる体外受精。晩婚化が進んでいることもあり、その患者は年々増えています。問題なく発生・成長は出来ますが、自然妊娠によるものとは受精直後から周りの環境が違っています。この影響が後々まで影響するかは不明でした。今回、それを調べるための実験が行われました。

表現型としては体外受精の場合、自然妊娠の場合と比較してメスのマウスではインスリン抵抗性(インスリンがしっかりと働かず、血糖値が高くなる)があり、両方の性別で、遺伝子発現が変動することが知られていました。今回はその長期的な影響について調べるため、青年期のマウスの肝臓し、筋肉、脂肪、すい臓での代謝産物の変動を調べました。体外受精グループ特異的な変化というものは無いものの、体外受精グループと自然妊娠グループで各組織での代謝の変化は見られました。例えば体外受精グループの脂肪組織では酸化ストレスのサインが見られるなどです。

この結果がそのまま人にも適用できるわけではありません。受精時の環境の変化により、インスリン抵抗性の変化などにつながって、大人になってもずっと続いているということは、エピゲノムなどの変化が起き、それが伝わっている可能性が考えられます。こんな初期からエピゲノムは影響を受けているとは意外にセンシティブですね。雌雄で差が出るのも興味深いところ。Y染色体のエピゲノムへの影響のせいなのでしょうか。

元の論文
Sexually Dimorphic Effect of In Vitro Fertilization (IVF) on Adult Mouse Fat and Liver Metabolomes

体臭は裁判での判断材料になりうるか

突然ですが、「香水 ある人殺しの物語」という本をご存知でしょうか。今から約30年前にドイツで書かれた本で、当時大ヒットし、2006年には映画化もされたそうです。この本のはにおいをメインテーマにした珍しいストーリーで、主人公のグルヌイユは生まれながらにしてどんなにおいも嗅ぎ分ける超人的な嗅覚を持っており、そのにおいを決して忘れないという人でした。ある日、町で出会った美しい女性の体臭に惹きつけられ、そのにおいを我が物にしようと次々と殺人に手を染めていくというものです。私たちはグルヌイユほどではなくても、意外と優れた嗅覚を持っているかもしれないという報告がありました。

グルヌイユは全く体臭の無い人間としてかかれていましたが、通常人は誰でも体臭を持っており、指紋のように一人一人違っています。犯罪捜査などには訓練を受けた警察犬が、においを判断するために出てくることはご存知かと思います。今回は法廷などの場で人の目撃証言ならぬ「鼻」撃証言の考えを提唱し、その信頼性を調査しました。方法はあらかじめ20人分の体臭を集め、40人に残虐的な犯罪のビデオを見てもらいました。この際に20人分のサンプルのうち一つを嗅がせ、あとで20人分の体臭のサンプルからどのにおいだったか当ててもらうというものでした。結果、75%という高い確率で当てられたそうです。ものの研究では、目撃証言の信頼性を調べると、正答率が45-60%だったそうで、「鼻」撃証言のほうが信頼できるかもとのこと。

実際の犯罪被害者を用いて行ったものではありません。さらに今回の実験はポルトガルで行われており、被験者や体臭のサンプルも現地人であると思われます。欧米人に比べ日本人は体臭が少ないといわれているので、個人的には日本で今はまだ「鼻」撃証言を証拠として使うには懐疑的ではあります。でもカメラのように、においを記憶する装置が開発され、客観的な証拠となるようであれば信用できるのではと思う。グルヌイユは自分の体臭がない代わりに、自分で作った他人の体臭の香水を使いこなし、他人に成りすましたり、人の心をコントロールしていました。この本を読んだときはにおいでそこまで出来るはずが無いと思っていましたが、あながち間違いではないのかも。

元の論文
Nosewitness Identification: Effects of Negative Emotion

「香水 ある人殺しの物語」について歌った歌まであるので、参考までに乗せておきます。

ニルヴァーナ・Scentless Apprentice

ラムシュタイン・Du riechst so gut
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。