スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

HIVを眠りから起こす薬の開発

私たちの世界には揺らぎやノイズにあふれています。無視してよい場合もありますが、時としてゆらぎやノイズに由来するほんの小さな違いが、後々大きな変化をもたらすことがあります。生物にとってもそれは同じで、細胞の運命決定は確率的なプロセスによって決まり、細胞間に違いを生みます。AIDSの原因ウイルスとして知られるHIVウイルスにとってもゆらぎ、ノイズは重要で、潜伏状態のままでいるか、それとも複製を開始するかというのも確率的に決まります。潜伏期間を決定する重要な要素がLTRという遺伝子で、この遺伝子が一定以上になると潜伏状態から脱却します。今回、LTRの遺伝子発現レベルのゆらぎだけをコントロールし、平均的な遺伝子発現量は変化させない薬が作られました。

今回はJurkatという培養細胞にLTRプロモーターでコントロールされたGFPを1コピー導入しました。この細胞に対しスクリーニングを行い、GFPの発現の平均値とばらつきをフローサイトメトリーで調べました。すると、約1600個あった薬のうち、80個でGFPの平均値が変化せず、なおかつノイズに変化がおきるものを見つけました。今回みつけたノイズを増幅させる薬を、HIV感染Jurkatに投与すると、単体ではHIVの増幅は見られませんでしたが、アクチベーター(LTRの発現の平均値を上げる薬)と一緒に混ぜると相乗効果でHIVの増幅活性があがりました。さらに副作用による細胞毒性も減っていました。逆にノイズを減らす薬をアクチベーターと混ぜると、HIVが活性しにくくなっていました。

現在AIDSに対する薬というのはあるのですが、潜伏期間のHIVに対して効果はありません。今回の薬でHIVが潜伏状態から脱却できなくしたり、任意に脱却させる方法の基礎となるでしょう。他にもノイズがコントロールできれば、副作用を減らしつつ、薬の利き方を最大にあげることができるのではないかと思います。個人的には非常に興味深い研究です。2年くらい前に細胞の遺伝子発現のノイズを減らせないかと考えたことがあって(考えただけですが)、将来的にやりたいと思っていた研究分野だけに先を越された気分。周りの人にはなかなか理解してもらえないだろうけど、非常に重要だし、面白いと思う。余談ですが、ソニーのウォークマンにはノイズキャンセリング機能が付いていて、この効果が絶大です。(私のノイズを減らせないかという考えはウォークマンを使っているときに考えました。)

元の論文
Screening for noise in gene expression identifies drug synergies
スポンサーサイト

テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。