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No.8 小児膠芽腫のメカニズム

今回の論文
Inhibition of PRC2 Activity by a Gain-of-Function H3 Mutation Found in Pediatric Glioblastoma
Peter W. Lewis, Manuel M. Müller, Matthew S. Koletsky, Francisco Cordero, Shu Lin,
Laura A. Banaszynski, Benjamin A. Garcia, Tom W. Muir, Oren J. Becher, C. David Allis
Science VOL 340 17 MAY 2013


簡単に言うと、
小児膠芽腫という病気で見られる変異はPRC2というタンパク質の働きを阻害するということが分かりましたという内容。

背景として、
小児性膠芽腫というのは脳内に腫瘍が出来る病気で、子供のときに発症し、大人になる前に死んでしまうことがほとんど。この病気の患者は、ヒストンH3.3という、細胞核内に多く見られるタンパク質の端から27番目のアミノ酸がメチオニンに変異しているケースが多いことが明らかとなっていた。ヒストンの27番目のアミノ酸はリジンというものでメチル化(-CH3)されることが知られている。H3.3の27番目のリジンのメチル化は発生に非常に重要な役割を担っていて、これにポリコームというタンパク質群が関与している。今回、H3.3の27番目のリジンがメチオニンに変異することでポリコームの中心的なタンパク質であるPRC2の活性が抑制されていることが明らかとなった。今回の事例は遺伝的な変異によってエピジェネティックな状態が大きく変化する病気があるという例である。

具体的には、
小児膠芽腫の患者とマウスの細胞内ではH3K27me3が大きく減少し、H3K27acはやや増加し他の修飾では変化はおきていないことが分かった。
次に培養細胞を使い、H3.3, H3.3K27M, H3.3K27Rを発現させた。すると、H3.3K27Mを発現させたときのみH3K27me2とme3のレベルが減少していた。さらにリジンを他のアミノ酸に変異させたヒストンを発現させると、K27I, K27MのときのみH3K27me3のレベルが減少していた。他のバリアントでもK27M変異を起こすとK27me3レベルが減少していた。
次にK27Mの変異があることでK27me3が減少しているのはメチル基転移酵素の活性が抑制されているからではないかと考え、in vitroでの実験を行った。K27Mのヌクレオソームに転移が起きないのはもちろん、K27Mのペプチドがあるだけでヒストンへのメチル基の転移が抑制されていた。
さらに詳しく調べると、PRC2のうち、EZH2というサブユニットが阻害されていることが判明。特にチオエステル基が重要らしく、人工アミノ酸のノルロイシンに置き換えるとさらに阻害効果が高まった。EZH2はSETドメインがあり、他のSETドメインをもつSUV39hやG1aもK9Mペプチドで阻害された。K->Mの変異をK4, K9, K36に導入しても、やはりメチル化が阻害された。

個人的には、
不思議に思うことが2点ある。まず、データを見ると、グローバルなH3K27のメチル化の抑制がK->M, K->Iの変異のときだけ起きるのかという点。他のアミノ酸でもメチル化されなくなるので全体としては減りそうだけど、この2パターンでしか見られない点。たぶん構造的な理由があるのだろうけど。もう一つは小児膠芽腫とPRC2の活性の抑制が関連しているとしたら、それがH3.3上のリジンの変異の際におきるという点。過去の報告にはH3.3にはアセチル化などの発現を活性化する修飾が多いことが示されており、H3.3K27はメチル化されにくい。したがって、H3.3上の変異によってK27acが減少するはずなのに、減らないのが不思議。H3.3の変異の変異によって発症している例が多く、H3.1/H3.2への変異によって発症しているケースが少ないという点も不思議。ヒストンバリアント間のクロストークのようなものがあるのかもね。興味深い。この病気のメカニズムが分かっても治療はまだまだ先だな。遺伝子に変異が入ると治療は厄介だからね。
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テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

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