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睡眠中に記憶を作る

驚いたことに、睡眠中に人為的な記憶を生み出すことができるという報告がありました。マウスで睡眠中に特定の場所と報酬との関連付けをさせることに成功し、起きた後も関連付けに基づいてマウスは行動したそうです。

脳の海馬に場所細胞という細胞があり、動物が特定の場所にいるとき、例えば右隅、左中央などにいるときに活性化します。(場所細胞の発見は昨年のノーベル賞になっています。)起きているに作られた場所細胞の活性化パターンは睡眠中にも再生され、動物の行動範囲に関する認知地図を作り上げるのに役立つと考えられています。著者らは、寝ている5匹のマウス5匹に特定の場所で活性化する場所細胞を活性化させつつ、同時に脳の報酬経路を刺激しました。これにより、特定の場所に行ったときだけ、報酬を受け取れるという記憶を作り出そうとしたのです。。コントロールのマウス2匹には報酬に関係のない刺激を与えました。マウスが目覚めたとき、報酬刺激と場所細胞の活性化をさせたマウスのみが、その場所細胞で決まった特定の場所で過ごす時間が多くなりました。つまり、睡眠中のマウスにこの場所に行けば報酬をもらえるという記憶を人為的につくりだせたと考えられます。

これまでに、マウスで光遺伝学的手法を使って、記憶を人為的に操作できることが示されていましたが、睡眠中の動物で記憶の操作に成功したのは初めてです。ヒトで起こり得るのかは、わかりませんが期待し出来そうです。

元の論文
Explicit memory creation during sleep demonstrates a causal role of place cells in navigation

バクテリアがガンを守っている

腫瘍に隠れたバクテリアが腫瘍を免疫システムから守っているという報告がありました。

Fusobacterium nucleatumという細菌が口内にいるのですが、この細菌は早産、関節リウマチ、大腸がんなどとの関わりが示されています。今回の研究ではがん細胞におけるこの細菌の影響を調べました。まずin vitroでこの細菌はがん細胞にくっついており、TIGITと呼ばれる免疫細胞受容体を活性化することで免疫細胞を阻害していることが明らかになりました。さらに実際にメラノーマや大腸がんでは様々な免疫細胞がTIGITを発現しているのですが、それがF. nucleatumによって阻害されていました。

一部のガンではバクテリアが大量に見つかるのですが、今回のように免疫システムから腫瘍細胞を守っているからかもしれません。でも何のメリットがあってバクテリアは腫瘍細胞を守るようなことをするのでしょうか。

元の論文
Binding of the Fap2 Protein of Fusobacterium nucleatum to Human Inhibitory Receptor TIGIT Protects Tumors from Immune Cell Attack.

脳の損傷を直す細胞

人の幹細胞を使い、放射線によって損傷を受けた脳を修復することに成功しました。

がん治療には様々な方法がありますが、その一つに放射線治療があります。これは重粒子線などでガンを死滅させる方法です。もちろん正常な細胞へのダメージを極力減らすように工夫はしていますが、なくすことは難しいです。そのため、脳腫瘍の治療に放射線治療を行った場合、記憶力、注意力、学習能力に障害が見られます。特にミエリン(髄鞘とも呼ばれ、脳の電気信号の伝達を速める)がなくなってしまうことが原因になります。今回はオリゴデンドロサイト(ミエリンの形成にかかわる細胞)の前駆体細胞をES細胞から作製しました。その細胞を放射線によって損傷を与えたラットの脳に注入しました。すると、前駆体はオリゴデンドロサイトとなり、ミエリン(髄鞘)を再形成するようになりました。細胞を注入されなかったラットよりも、学習能力が高くなり、損傷を受けていないラットと同等まで回復したそうです。

この結果は放射線治療によって脳腫瘍が治った人にとっては有益になりそうです。注入した細胞が脳のパーツとなった点は基礎生物学的にも重要になるのではないでしょうか。

元の論文
Human Embryonic Stem Cell-Derived Oligodendrocyte Progenitors Remyelinate the Brain and Rescue Behavioral Deficits following Radiation

人のDNAでマウスの脳が大きくなった

一体何が人を人たらしめるのでしょうか。この問いは哲学的でもありますが、やはり高い知能が人間を人間たらしめる、他の生物には無い特徴と言えるでしょう。高い知能には大きな脳が必要になりますが、今回、ヒトのDNAで脳のサイズが大きくなることが分かりました。

今回調べたのは遺伝子ではなく、エンハンサーと呼ばれる領域です。エンハンサーは近傍の遺伝子の発現を活性化させる領域です。今回は人とチンパンジーのゲノムDNAの比較や過去の論文から、脳で発現する遺伝子の近傍のエンハンサーを探し出しました。まず100個以上の候補を選んだ後、その約半数を胚期のマウスに挿入し、エンハンサーとしての活性の有無を調べました。そのうち、HARE5というエンハンサーは大脳皮質で特に活性化することが分かりました。HARE5はFrizzled 8という脳の発生に関わる遺伝子を活性化させているらしく、神経細胞の細胞分裂を促しているようです。これにより、HARE5を組み込んだ胚マウスではチンパンジーのエンハンサーと比較して、脳のサイズが約12%大きくなったそうです。

エンハンサーと表現型のかかわりを明確に示したのは初めてかもしれません。まだまだ不明な点は多く、エンハンサーとしての役割ではなく、エンハンサーからもRNAが作られるため、こっちの影響によるものかもしれません。いずれにしても、DNAのうち、遺伝子で無い部分の役割をこのような形で示す研究が増える予感がします。ところで、このマウスは成長したらちゃんと脳は頭蓋骨の中に入るだろうか。

元の論文
Human-Chimpanzee Differences in a FZD8 Enhancer Alter Cell-Cycle Dynamics in the Developing Neocortex

奇跡!​クロモスリプシス ​で先天的な免疫不全症が完治した

非常に特異な例が報告されました。WHIMという先天的な免疫不全症候群が完治したという内容です。しかもその方法がクロモスリプシスという染色体がバラバラになってしまう現象によるものです。

まずWHIMはCXCR4という、ケモカインという細胞間のメッセージとなる化学物質を認識する遺伝子に変異が入ることで起きる、まれな病気です。この遺伝子へヘテロに変異が入ることにより、通常なら刺激を受け、下流のパスウエイを刺激した後に、フィードバックによりもとに戻るのですが、変異があるとフィードバックを受け取れず、下流のパスウエイを刺激し続けてしまいます。これにより、白血球が骨髄から血液内に入ることができなくなり、結果、免疫不全になる病気です。クロモスリプシスとは最近見つかった現象です。染色体破砕ともよばれ、その名の通り、染色体がバラバラになり、配列が再編成される現象です。通常、クロモスリプシスを起こした細胞は死に至り、万一生き残ることができてもガン化するものと思われていました。今回、血液の幹細胞にクロモスリプシスが起き、これによって正常な白血球が作り出せるようになったWHIM患者が見つかったそうです。

クロモスリプシスについてはまだまだ知らないことが多く、現在の技術では治療に使用するのは無理な状態です。しかし、遺伝的な病気がなくなる可能性を秘めており、完璧にクロモスリプシスをコントロールできるようになれば、医療にとって非常に大きな進歩になりそうです。仮に再編成が難しくても、特定の染色体だけをバラバラにすることができれば、ダウン症のようなトリソミーの根治治療ができるようになるのではないかと考えられます。

元の論文
Chromothriptic Cure of WHIM Syndrome
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