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Natureが選ぶ2015年期待の分野

あけましておめでとうございます。
最近サボり気味ですが、本年もよろしくお願いいたします。

今回は新年最初の投稿になるので、今年一年の科学の展望という意味で、今年期待の分野を紹介しようともいます。

Particle smasher
こちらは大型ハドロン衝突型加速器(LHC)をもちいた研究です。LHCはスイスとフランスの国境付近にある、全長27キロの環状になっている世界最大の素粒子加速器です。簡単に言えば陽子ビームを加速させ、ぶつけることで素粒子を取り出そうというものです。この機械は以前からあり、ヒッグス粒子の観測に成功しています。しかしながら、2013年からビームエネルギーとビーム輝度の増強のためにシャットダウンしていました。今年3月に再始動する予定で、現在の素粒子に対する理論的な結果と実際に観測された現象のギャップを埋めてくれると期待されています。

Climate deal
これは環境問題のことです。昨年2大CO2排出国である中国とアメリカが温室効果ガスを減らすための公約を結んだことで、2020年以降の環境対策に関する世界的な方針が決まると期待されています。(2020年まではいわゆるポスト京都議定書で決まっている)

End of Ebola epidemic
昨年大流行したエボラウイルスのパンデミックが終了することが期待されています。この背景にはワクチンや薬のトライアルが始まることがあります。

Trips to dwarf planets
こちらはNASAの探査機Dawnです。昨年はロゼッタが彗星にたどり着いたことが大きな話題になりましたが、今年はDawnが火星と木星の間にあるケレスという準惑星に到着予定です。ケレスには水が存在していると考えられており、地球外生命体の発見に非常に大きな期待が寄せられます。また、NASAは今年、ホライゾンが冥王星に最接近する予定で、冥王星の大気の状態なども判明する予定です。

Shiny new labs
今年多くの新しいラボがオープンします。およそ10億ドル(大体1200億円)をかけたフランシス・クリック研究所を始めとし、National Graphene Institute 、Allen Institute for Cell Science など大規模な研究所が開設されます。

Cholesterol-busting drugs
コレステロールを減らす薬の開発が期待されています。PCSK9というタンパク質をターゲットとした薬の臨床実験が行われ、今年承認がおりると期待されています。

Waves in space-time
LIGOという組織が行っている重力波の観測実験です。アインシュタインによって存在が予測された、時空間の概念を考える上で非常に重要なんだそうです。

Answers to ancient riddles
400,000年前の初期の人類言われるシマ・デ・ロス・ウエソス人のゲノム配列の解読です。現代人や他の古代人との比較から進化の過程が明らかになるかもしれません。

Political manoeuvres
各国の科学政策に大きな変化がおきようとしています。ロシアでは450の研究所の見直しが行われ、イギリスでは三人の親から体外受精によって子供を作ることの是非が問われます。(三人の親というは核DNAは普通の父と母由来で、ミトコンドリアDNAが別の母由来の場合です。これによりミトコンドリアに異常がある人でも正常な子供が残せる。)他にもいくつかありますので詳しくは情報元で。

Ocean outlook
アメリカではSikuliaqとNeil Armstrong 、ドイツのSonneなどの海洋研究です。実は海は意外と未知な部分が多いです。海は気候に影響も与えるほか、特殊環境下の化学物質や生物の研究が行われるでしょう。

情報元
What to expect in 2015

Natureが選ぶ今年の10人

早いもので今年ももう終わりですね。
先日Nature誌が選んだ今年の科学者10人が発表されました。今日はこの人たちを簡単にですが紹介したいと思います。

ANDREA ACCOMAZZO (European Space Agency)
この人は彗星探査機ロゼッタの責任者。ロゼッタは今年8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着しました。要するにイトカワへ行ったはやぶさみたいなものです。

SUZANNE TOPALIAN (Johns Hopkins)
この人はがんの免疫療法の臨床実験を実施した人。ガン免疫療法とはガンを薬でやっつけるのではなく、自分の免疫力で退治させる方法。方法はいくつかあるのですが、今回のはT細胞のブレーキであるPD-1というタンパク質の働きを阻害するというもの。日本ではニボルマブという抗体(抗PD-1抗体)が悪性黒色腫の治療薬として製造販売が承認されましたが、主にこの人の結果をもとに承認が下りました。その後アメリカのFDAも別の抗PD-1抗体をされました。ガンは先進国で死因のトップであり、今後免疫療法は大きな市場になると期待されています。ちなみにPD-1というタンパク質は京大の本庶先生という方が発見しました。

RADHIKA NAGPAL (Harvard University)
大量のロボットをコントロールするシステムを開発した人。アリやハチなど、中心となるリーダー無しに集団行動をする生物を参考に作られました。自己組織化によって個々が動くことでkilobotと名づけられた小さロボットが様々な形を作り出すことに成功しました。もしかしたら将来ロボット同士がコミュニケーションをとりながら存在する、そんな未来を感じさせてくれます。

SHEIK HUMARR KHAN (医師)
エボラウイルスと闘った医師。今年の大流行したエボラ出血熱に対し、最前線で戦い、そして亡くなった人です。エボラウイルスのDNA配列を解読もしました。個人的にはノーベル平和賞ものじゃないかと思います。

DAVID SPERGEL(Princeton University)
宇宙誕生の際、ビッグバン直後に急速に宇宙が進化したと考えられており、その理論をインフレーション理論といいます。その証拠となりうるものに重力波という相対論で予期される波があるのですが、これを観測できたという報道がハーバード大のJohn Kovacという人から出てきました。ノーベル賞級の発見だと話題になりましたが、このDAVID SPERGELという人は、その発見はアーティファクトであるとの考えを示し、話題になりました。結局John KovacはSpergenを納得させることが出来ておらず、今後の進展が待たれるところです。

MARYAM MIRZAKHANI(Stanford Univrsity)
「リーマン面とそのモジュライ空間の力学と幾何学に関する顕著な業績」を理由にフィールズ賞を受賞した人。フィールズ賞は数学のノーベル賞とも呼ばれるもので、女性受賞者は初。申し訳ないけど研究内容は難しすぎて私には理解できていません。

PETE FRATES
今年話題になったアイスバケツチャレンジの発案者(の一人)。PETEはもともと大学の野球選手でしたが、2012年にALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されました。その後、ALSの啓発のためにアイスバケツチャレンジを始めたそうです。

KOPPILLIL RADHAKRISHNAN(Indian Space Research Organisation)
火星探査機Mangalyaan(非公式な名称)を火星に到達させた人。アジアの国でははじめて火星へ探査機を到達させ、インド科学界の隆盛を感じさせてくれました。

MASAYO TAKAHASHI(理研CDB)
iPS細胞による再生医療を実施。加齢黄斑変性患者へのiPS由来の網膜細胞移植手術を行いました。世界初の臨床研究です。STAP細胞騒動にゆれる中、日本の科学に希望の光を照らしたのではないかと思います。


SJORS SCHERES(MRC Laboratory of Molecular Biology)
RELIONというソフトウエアを作った人。RELIONはクライオ電子顕微鏡による3次元イメージの再構築を行うもの。これまでのものでは再構築した画像が初期値の微妙なずれで大きく変化してしまうという問題があったのですが、これを克服し、今年リボソームの構造を解明しました。リボソームは複数のタンパク質やRNAからなる複合体で、X線構造解析やNMRによる構造解明の難しいものでした。その点、クライオEMはその問題が無いので、構造生物学にとって大きなターニングポイントになりそうです。

他に、来年の注目の人として
1)環境改善へ向けて大きく歩き出すと考えられる、中国の環境省のトップ、Xie Zhenhua
2)NASAの冥王星探査機ホライゾンの責任者Alan Stern
3)エボラと戦っているMédecins Sans Frontièresの国際理事Joanne Liu
4)ヨーロッパの核融合エネルギーの実現性を研究するための実験施設 であるITERのBernard Bigot
5)マイクロソフトの創業者の一人、ポールアレンの出資により作られたAllen brain instituteがAllen Institute for Cell Scienceとなり、そこのトップとなったRick Horwitz
を挙げています。詳しくは情報元の記事で。

情報元
365 days: Nature's 10

ジェームス・ワトソンのノーベル賞が410万ドルで落札

今日は堅苦しい話ではなく、軽ーい話を。

生物学の分野では20世紀最大の発見と呼ばれるDNAの二重らせんの構造の解明。この発見者の一人ジェームス・ワトソンがノーベル賞をオークションに出していたのですが、それが410万ドル(約4億9千万円)で落札されたそうです。ちなみに今は亡きフランシス・クリックのノーベル賞も昨年オークションに出され、227万ドルで落札されています。これにてワトソンは存命中にノーベル賞を売った初めての人になりました。

ワトソンはメダルを売った理由はお金のためで、大学に寄付するか、デイヴィッド・ホックニー(芸術家の名前)の絵を買うと語っているそうです。ワトソンは失言が多いことでも有名で、過去に人種差別を思わせることを話して批判されたりなんかしています。

口は災いのもとだよ、ワトソン君。

情報元
James Watson Throws a Fit

恋愛に遺伝的要因があるかも

中国漢民族の大学生グループにおける恋愛にDNAが影響する可能性を示唆する報告が、報告されました。恋愛行動は、脳内のセロトニンという神経伝達物質の濃度と関連していることが既に知られており、今回の研究では、恋愛関係になる可能性がセロトニン受容体をコードする遺伝子の複数の多様体と関連しているらしいということが明らかになりました。

今回、中国漢民族の大学4年生579名を対象として、5-HT1A(セロトニン濃度を低下させる受容体)をコードする遺伝子の変異の影響を調べました。特に、この遺伝子の1019番目のDNAの塩基がCかGという、2つの遺伝子多様体(GアレルとCアレル)に着目しました。Gアレルは、Cアレルより5-HT1A濃度を大きく上昇させていました(つまりセロトニン濃度が低く保たれる)。そしてアレルを1コピーまたは2コピーもっていると、恋愛関係になる可能性が低くなることを明らかにしまた。Cアレルを2コピー持っているの50.4%が恋愛関係にあるのに対し、Gアレルを1コピー又は2コピー持っている人はの39.0%が恋愛関係にあったのです。この関連性は、恋愛関係に影響する他の要因(例えば、社会経済的状況、外見、宗教的信念、子育てのスタイル、抑うつ症状)を考慮に入れた場合でも維持されると考えられています。

ただし、この知見は中国の漢民族という限られた集団を対象にした研究であり、日本人などのグループの人々で再現できるかどうかは分かっていません。恋愛関係の形成に遺伝要因が寄与していると考えられる反面、別の要因(例えば、社会的特質や個人的特質)によって遺伝的要因が目立たなくなる可能性は当然あります。恋愛体質だなんて言う人がいたりますが、もしかしたらそういう人たちに共通する変異があり、遺伝的要因によってそうなるのか興味深いところではあります。

元の論文
The association between romantic relationship status and 5-HT1A gene in young adults

テーマ:雑学・情報 - ジャンル:学問・文化・芸術

豆が小麦と地球を救う

社会にはいろいろな問題がありますが、二酸化炭素の排出量の増加や世界的な人口増加というのは大きな問題となっています。この二つの問題をもしかしたらコムギが救う救世主となる可能性が出てきました。

ご存じのとおり、コムギはパンや麺に使われ、世界的にも人気の高い食料源です。現在の農法では、コムギの単作あるいはコムギと休閑のサイクルによる栽培(2年の栽培と1年の休閑で1サイクル)が行われています。休閑期は力を回復させるため,一定期間作物の栽培をやめることで、複数回の耕運(壌を耕し、雑草が生えないようにする)が必要になってきます。しかし、耕運には大量の化石燃料が必要で、耕運によって土壌有機物が減るため、この栽培法が、環境に深刻な影響を及ぼしています。

今回、この問題をどうにかできないかと、さまざまなコムギ栽培法による二酸化炭素排出量を調べる研究が行われました。その結果、休閑期の頻度を減らし、窒素固定を行うレンズマメなどの穀実用マメ科作物を輪作(同じ土地に別の性質のいくつかの種類の農作物を何年かに1回のサイクルで作っていくこと)に加えることで、コムギ栽培による二酸化炭素排出量を減らし、大気からの二酸化炭素の吸収が大気中への排出を上回るようにできる可能性が示されました。

今回の内容は要するに休閑期の耕運代わりに窒素固定をするマメ科の植物を植えれば、土が耕されて地力も上がるし、二酸化炭素の排出も抑えられるだろうってこと(多分)。コムギに休閑期をいれること自体は割と普通に行われていますが、特にレンズマメとの輪作は効率が良いようです。

元の論文
Improving farming practices reduces the carbon footprint of spring wheat production

テーマ:雑学・情報 - ジャンル:学問・文化・芸術

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